アタシの正直な気持ち
『ねこのきもち』という猫の月刊雑誌がある。発行はベネッセ。
書店で買うのではなく、一度申込んだら通信講座のごとく毎月届く。
先月創刊したばかりで、ほんの2、3日前に2号目が届いたのだが、
もういいやと思ったので、購読中止の電話をした。
そうしない限り、ずーっと送ってくるシステムだから。
手続きは淡々と進み、最後にこう聞かれた。
「もしよろしければ、購読中止の理由をお聞かせいただけませんか」
「えっと…、もうだいたい様子がわかったので」
職場からだったし、少々面倒臭かったので手短に答えた。
「そうですか。ありがとうございました」
受話器の向こうの彼女は非常に感じのいい対応をして去っていった。
しかし、とたんにrindenは激しい自己嫌悪に陥ったのだ。
自分が伝えるべきは、そんなことじゃなかったのだと。
歯磨きなんてさせてくれないし、飼い主にもそんな気がありません。
ブラッシングもさせてくれませんから同様です。
付録の吸収タオル、せっかくですがうちの猫はシャンプーしません。
トイレの砂は適当に入れ替えるだけなので、雑菌の繁殖具合なんて気になりません。
よく吐くので、いちいち病気だなんだと心配していられません。
いたずらするけど、そんなもんだと思っています。
留守中にどんな風に過ごしているかは、猫の勝手なので興味がありません。
猫じゃらしでどう遊ぶかは、わざわざ教えてもらうことではないと思います。
具合が悪くなったら獣医に連れていけばいいので、
中途半端なメディカル情報は必要ないと思っています。
だからいままでの貴誌の特集は自分の役に立たず、ほとんど読まないんです。
私が読みたいのは「ワクチン接種が重要な理由」とか
浅田次郎が書くようなしみじみとした猫の小説とか
身悶えして腰がくだけるような、超かわいらしい猫の写真とか
くだらないキャプションを付けて大笑いするようなおもしろ写真なんです。
それが貴誌がもの足りなかった理由です。
読者として、何より編集者の端くれとして、伝えるべきは正直な思いだったのだ。
相手がひょっとして傷付くんじゃないかと思った自分のもの言いは、
結局何も産み出すものではなかった。