20年近く時が過ぎていた
昔のことです。
当時仕事で大変お世話になっていたTさんにある女性を紹介された。
Tさんと大学の同窓だとかで、仕事も同じモノ書き。
こういっては失礼だけど、ごく普通の30代の女性という印象だった。
「彼女はね、子ども連れてサーカス行ってたの」
??
よく聞くと事情はこうだった。
離婚したのち4歳の息子を連れてサーカスに入り、
炊事係として1年間、サーカスで暮らしたのだという。
もちろん公演各地を転々とするテント生活だ。
…なんだか目玉が飛び出る話だった。さらに
「で、大宅賞の最終選考まで残ったんだけどね」
またまた?? 大宅賞?
つまり、その体験をまとめた本が、大宅壮一ノンフィクション賞に、ということだ。
およよよ。わなわな。
果たしてその数年後に彼女は、別の作品で大宅賞を受賞したのだった。
フィリピン女性と結婚する日本人男性を取材してまとめたもので、
確か玉置浩二主演でテレビドラマにもなった。
ノンフィクション。創りものじゃない話。
書くことに相当の覚悟がいるだろうし、生易しいわけない。
実際、彼女の文章はち密で、行間からも表現したいことがあふれているよう。
起こっていることをすごく客観的に見ている。
女性の視点を生かした著作、連載も多く、
現在では著名な女性ノンフィクション作家さんだ。
今年の大宅壮一ノンフィクション賞に史上最年少で受賞した男性が
彼女の息子さんだと、今日新聞で知った。一緒にサーカスに行ってた、4歳の子だ。
そのテーマは戦場での死の意味を問うというとてもヘビーなものだ。
rindenはあれから、何をして、何を考えてきたのかな。…何も。
受賞を喜ぶとともに、自分のふがいなさを憂うよ。
旅のガイドは帰ってから読み返すほうが面白いと、いつも思う。
今日書店で見かけて思わず購入した『ウィーン 小さな旅物語』。
タイトル通り、ガイドというより物語。
ウィーンには、ウィーンのものだけがあったなぁ。いい意味で。